top of page
アンカー 2

​Photo by Shunta  Inaguchi

彼女は右手を伸ばし、私の二の腕を摘んだ。

2016

インスタレーション

​ミクストメディア、テキスト

 

彼女は、私がアシスタントをしている造形教室に通う子の一人で、彼女は自閉症と知的障害を持っている。 私が話しかけても、彼女からの返事はほとんどないが、彼女は手を伸ばし、私の身体に触れることがある。

 

自閉症と知的障害を持ち、会話をすることが困難な彼女にとって、対象に触れることは世界の入り口であるのかもしれない。彼女は手を伸ばし、彼女をとりまく世界を確かめている。

 

けれども、彼女に触れられた私の身体が、彼女の中でどうなってしまうのか、すぐに消えてしまうのか想像することは、死後に自分がどうなるか想像するような途方も無いことに思えた。

 

描いていた絵が完成したとき、彼女は私に抱きつくことがあった。そのとき私は彼女を労わる気持ちで、彼女の背を数回軽くたたいた。

 

彼女が、私の身体に触れようと伸ばした手を受け入れるとき、確かに私の心身は彼女の世界に存在しているように思えた。

bottom of page